シザーハンズ
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シザーハンズ@映画の森てんこ森
シザーハンズ (1990)
EDWARD SCISSORHANDS

【解説】
 『シザーハンズ』は、鬼才ティム・バートン監督・製作・原案の 1991 年公開のファンタジー・ロマンス。長い年月が経ってもいい味が忘れられない映画なので取り上げてみた。公開時コピーは「汚れを知らない 優しいエドワード」。英語の題にあるように、主人公エドワードはシザーハンズ、つまり両手がハサミなのだ。これをジョニー・デップが哀愁を込めて演じている。この人をおいて他にいないと言えるほどのはまり役だ。(※ジョニー・デップについてもっと詳しくはこちら...。04/06/26リンク更新)
 ティム・バートンは同監督の「バットマン」のゴッサム・シティの闇や「スリーピー・ホロウ」の伝説の首なし騎士の暗い舞台映像等と同様、シザーハンズの住む丘の上の屋敷を暗く陰湿に映している。下界の絵の具で描いたような明るいカラフルな街と対照的だ。人造人間エドワードは、人間社会で愛・親切・楽しさと同時に怖さ・醜さを経験するが、これも対照的だ。結局、人間は利己主義で、無垢な心をもてあそぶという話に、純愛の要素を入れて、観る者を涙にさそう永遠の佳作だ。
●スチルはnostalgia.com、予告編はcinemaclock.comより許諾をえて使用しています。
上映時間 98分
製作国 アメリカ
公開情報 FOX
初公開年月 1991/07
ジャンル ファンタジー/ロマンス
《公開時コピー》汚れを知らない 優しいエドワード。
《米国コピーTagline》The story of an uncommonly gentle man
【スタッフとキャスト】

監督: ティム・バートン Tim Burton
製作: デニーズ・ディ・ノヴィ Denise di Novi
    ティム・バートン Tim Burton
製作総指揮: リチャード・ハシモト Richard Hashimoto
原案: ティム・バートン Tim Burton
    キャロライン・トンプソン Caroline Thompson
脚本: キャロライン・トンプソン Caroline Thompson
撮影: ステファン・チャプスキー Stefan Czapsky
特殊メイク: スタン・ウィンストン Stan Winston
音楽: ダニー・エルフマン Danny Elfman
 
出演: ジョニー・デップ Johnny Depp エドワード・シザーハンズ
    ウィノナ・ライダー Winona Ryder キム
    ダイアン・ウィースト Dianne Wiest ペグ
    アンソニー・マイケル・ホール Anthony Michael Hall
    キャシー・ベイカー Kathy Baker
    アラン・アーキン Alan Arkin
    ロバート・オリヴェリ Robert Oliveri 
    ヴィンセント・プライス Vincent Price
    エレン・グリーン Ellen Greene
    ビフ・イェーガー Biff Yeager
    ジョン・デヴィッドソン John Davidson
ネタばれ御注意!
 このレヴューは「テキストによる映画の再現」を目指して作文しています。よって、ストーリー展開の前知識やネタばれがお好みでない方は、読まないで下さい。
<もっと詳しく>

 監督と製作と原案のティム・バートンは幼いときから芸術的センスを見せていた。しかし、少年でありながら、怪物の絵ばかり描いていたので、普通の住宅街で変わり者として見られていた。このエドワード・シザーハンズのモデルは、原案者でもあるティム・バートン自身だと言われている。

 バートンは 76 年、ウォルト・ディズニー創立のカリフォルニア・インスティテュート・オブ・ジ・アーツに奨学金を獲得して入学、ディズニー・スタジオによって前年に設置されたアニメーター学科で学ぶ。 79 年にディズニーに就職し、アニメーターとして働き始めた。ここでも頭角を現し、彼の描いた作品はシカゴでは2つの賞を受賞、フランスのアヌシー映画祭で評論家賞を受賞した。しかし、バートンは奇怪な絵を描くのが好きで、ディズニーの可愛いキャラクターは合わなかった。

 そこで、ディズニーを去って、監督業に進むことになる。「フランケンウィニー」「ビートルジュース」「バットマン」シリーズ「ナイトメアー・ビフォア・クリスマス」「マーズ・アタック!」「スリーピー・ホロウ」「 PLANET OF THE APES 猿の惑星」と非常に特徴のある映像使いでヒットを飛ばしている。「マーズ・アタック!」はズッコケ火星人映画で、普通の監督の宇宙人ものと丸で別の味だ。他の大部分のバートン作品は、映像がやけに暗いダークコミック調で、出てくる役が普通人ではない独特の雰囲気の映画だ。

 人造人間のエドワードを演じるジョニー・デップ(『 プラトーン (1986) PLATOON 』『 シザーハンズ (1990) EDWARD SCISSORHANDS 』『 妹の恋人 (1993) BENNY & JOON 』『 GO!GO!L.A. (1998) L.A. WITHOUT A MAP 』『 ナインスゲート (1999) THE NINTH GATE 』『 スリーピー・ホロウ (1999) SLEEPY HOLLOW 』『 ショコラ (2000) CHOCOLAT 』『 ロスト・イン・ラ・マンチャ (2001) LOST IN LA MANCHA 』『 ブロウ (2001) BLOW 』『 フロム・ヘル (2001) FROM HELL 』『 パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち (2003) PIRATES OF THE CARIBBEAN: THE CURSE OF THE BLACK PEARL 』『 ワンス・アポン・ア・タイム・イン・メキシコ(原題) (2003) ONCE UPON A TIME IN MEXICO 』等)は、フロリダの高校卒業後ロサンゼルスへ移り、ロック歌手になった。「P」というロック・バンドだ。そしてロリー・アン・アリソンという女性と結婚し、離婚したが、ロリーが離婚後、俳優のニコラス・ケイジとお付き合いをして、ロリーの紹介でジョニー・デップはニコラス・ケイジと会うことになる。ちょっとややこしい話だが…。ロック・バンドをやっているし当初は俳優になるなんて関心はなかった。だが、やがてニコラス・ケイジが勧めてくれて、「エルム街の悪夢」のオーディションを受けて、採用されて、 84 年映画デビュー。だからニコラス・ケイジさまさま。(※ジョニー・デップについてもっと詳しくはこちら...。04/06/26リンク更新)

 ティム・バートン監督が 90 年、子供時代から自分で描いてきた絵とストーリーで「シザーハンズ」を作ろうと決心した時、主役のエドワード役にジョニー・デップを抜擢した。ジョニー・デップの容貌はティム・バートン自身によく似ていると言われる。更に、はみ出し者の人造人間のエドワードはティム・バートン自身なわけだから、バートンは、余程ジョニー・デップに惚れ込んだのだろう。ジョニー・デップはティム・バートンを「本当の友」として感謝しているらしい。ジョニーはこの「シザーハンズ」で大ブレイクしたのだから。

 ジョニー・デップは「シザーハンズ」で共演し、好き同士を演じている美しいウィノナ・ライダー(『 ビートルジュース (1988) BEETLEJUICE 』『 ヘザース/ベロニカの熱い日 (1989) HEATHERS 』『 シザーハンズ (1990) EDWARD SCISSORHANDS 』『 恋する人魚たち (1990) MERMAIDS 』『 ドラキュラ (1992) BRAM STOKER'S DRACULA 』『 若草物語 (1994) LITTLE WOMEN 』『 17歳のカルテ (1999) GIRL, INTERRUPTED 』『 Mr.ディーズ (2002) MR. DEEDS 』『 シモーヌ (2002) SIMONE/S1M0NE 』等)と実生活でも恋愛する。結局、結婚しなかったが、彼の腕には「ウィノナ・フォーエバー」という刺青がはいっているそうだ!今、別の女性のフランス人女優バネッサ・パラディがパートナー(正式な結婚ではない?)なのだが、そんな刺青していていいの?こっちが心配してしまう…。彼の趣味の一つは刺青で、身体に8つ彫ってあるらしい。でも、子供も生まれて「いいお父さん」もしているけれど。

 ティム・バートン監督は、この映画の最初に出てくる 20 世紀フォックスのロゴマークのサーチライトには、雪を降らせている。観客は先ずびっくりし、感動する。映画を見た後には、それが余計に心を打つ。このロゴマークの遊びが成功して、数年後の「マーズ・アタック!」のワーナー・ブラザーズのロゴマークの後ろには、空飛ぶ円盤を飛ばして再び遊び心を見せている。

 そう、「雪」が関係あるのだ。だからこの映画がクリスマスに観る映画として勧められている所以だ。冒頭は、雪の降るクリスマスの夜。美しい老婦人が孫娘と温かい部屋で団欒している。孫娘は「どうして雪は降るの?」と質問して、祖母が想い出を話し始める回想シーンから物語りは始まる。

 ある小高い丘の上の古い屋敷に、年老いた発明家の博士(ヴィンセント・プライス)が住んでいた。屋敷はまるで城のようで、暗く、下界とは別世界だった。博士はエドワードという人造人間(ジョニー・デップ)を作っている最中だった。もうすぐ完成という時、手を作っている間、手の代わりにハサミをつけておいた。ハサミと言っても、小さなハサミではない。 40 〜 50 cm くらいある長い、鋭いハサミをだ。なぜハサミなんかをつけたのか?ちょっとの間のつもりだったから?誰も知らない。

 博士はクリスマス・プレゼントのつもりで両手を贈ろうとしていたのだ。それが、何とあろうか、正に本物の両手を完成して、エドワードに取り付けようとしたクリスマス・イヴ、博士は急死してしまった!一人、残されたエドワード。この丘の城のような屋敷の中で、彼はそれ以来、たった一人で暮らさなければならなかった。しかも、手はハサミのまま。手以外は人間と全く同じなのに。

 丘の下は、丘の上と正反対。天気も家並みも明るい。家々はピンクや水色や黄緑色の派手な明るい色。芝生も植わっていて、住宅の区画はどれも真四角で、まるで平和な明るい街。そこに住むペグ・ボグズ(ダイアン・ウィースト)は、 40 歳くらいの美しく陽気な主婦。化粧品の訪問セールスの仕事をしている。近所を回っては、先日も来たばかりね、とか言われて、なかなか売れない。そこで、一度も行ったことのない、町外れの丘の上の屋敷に行ってみる気になった。

 広い敷地に、古びた鉄の柵と門扉がある。ギィーッと門扉を開けて、丘の上まで敷地内の小道を伝って登っていく。両脇には、いろいろな形にカットされた植木が並んでいる。どんな人が住んでいるのだろう、と考えながら、屋敷に着いた。薄暗い家だ。声をかけても誰もいない。あれ?誰かいる。わらの敷き詰めた屋根裏のようなところに、恐る恐る気配を覗っている誰かがいる。そこでペグは見つけた。ハサミの手の青年が。顔を傷だらけにして。お人よしペグは、青年から事情を聞いて、不憫に思い,自分の車に乗せて、自宅に連れて帰る。

 家に連れて帰ると、青年らしいシャツとズボンの清潔なものに着替えさせる。でも、両手がハサミだから、シャツを着るのも一仕事だ。部屋の写真立てに可愛いティーンエイジャーの女の子が写っていて、エドワードは一瞬でひと目ぼれする。その女の子はボグズ家の娘のキム(ウィノナ・ライダー)だった。学校から帰ったキムは、エドワードの姿を見て驚くが、何となく気になる存在となる。食事の時も、エドワードはナイフやフォークがよく使えない。ボグズ家の主人のビル・ボグズ(アラン・アーキン)や息子のケヴィン(ロバート・オリヴェリ)は興味しんしんで食事のし方を教えたり話を聞いたりして、どうやら家族はみんな好意的だ。

 エドワードはこの一家に親切にしてもらって嬉しい。何か自分の出来ることをしようと思う。そして、ハサミを生かせる仕事を率先してするようになる。手始めにボグズ家の庭木をハサミで刈って、動物や恐竜の形に整えた。すると大好評で、近所の家々から植木の刈り込みを頼まれる。今度はハサミでボグズ家の家族の髪の毛を切ると、やはり近所の人が、行列でやってきて、エドワードに芸術的なヘアスタイルにしてもらう。それも凄いスピードなのだ。人間の髪の毛が済むと、次ぎはペットの犬の毛のカットだ。エドワードは近所中でいっぺんに人気者になった。

 一方、エドワードはボグズ家の娘のキムが日に日に好きになっていく。キムの方もエドワードが気になっている。なにしろエドワードは純粋無垢だから、遊びに慣れていたキムには、新鮮な驚きだったのだろう。しかし、キムにはジム(アンソニー・マイケル・ホール)という、ガラの悪いボーイフレンドがいた。ボグズ家の奥さんペグはあんなにいい人なのに、娘のキムがどうしてそんな不良と付き合っているのか、変だが。このボーイフレンドはキムがエドワードに心を奪われているのを感じて、嫉妬する。嫉妬だけならよいが、純粋なエドワードに悪さをするのだ。

 人間社会に来て、ボグズ家の家族にも、近所の人たちからも可愛がってもらい、初めて生きる喜びと楽しさを得たのに、ジムからは人間の邪悪な面をいやほど味あわされる。事あるたびに邪険にされ、心を痛める。最悪なことに、ジムはエドワードの手のハサミを強盗のカギを開けるのに利用して、罪をエドワードにかぶせた。警察は一方的にエドワードを悪者にする。ジムの悪知恵は拍車をかけていき、エドワードは人間社会が初めて不信になる。心の痛みをどうしようもなく、あんな大切にしてくれたボグズ家の部屋のカーテンをハサミで切り裂いてしまうのだ。

 いったん歯車が狂うと、事態はどんどん悪くなっていくものだ。世間ではエドワードのことをウワサし、悪く悪く捉えていく。庭の植木の刈上げも、ヘアカットも、犬の毛のカットも、あんなに喜んでエドワードにしてもらったのに、今では悪者扱い。近所の人たちは完全に態度を豹変させた。ボグズ家の主人からも口うるさく怒られる。身に覚えのないことをシュンとして聞かねばならない辛さ。人間は利用できる時だけ利用して、悪いうわさが聞こえた途端、さっきまでの笑顔はどこかへ消えていく。人間は都合のいい時はご機嫌で、悪いときは 180 度回転して、辛く当たる。

 そんな心に傷ついたエドワードを、キムはそっと寄り添って慰めようとする。しかし、あぁ悲しいかな、エドワードの手は鋭いハサミ。キムを抱くことは出来ない。顔にそっと触れることさえ出来ない。そのつもりはなくても、触った相手は切れてしまうのだ。二人はいくら相思相愛でも、一緒になることは永遠に出来ない。それがわかってくればくるほど悲嘆に暮れるエドワード。もう人間社会なんか大嫌いだ!その時、心から愛するようになったキムは、自分の方からエドワーを抱いてあげる。

 すべてが吹っ切れたように、エドワードはボグズ家から出て行く。全てを受け入れた。キムは自分を愛してくれている、これは真実だ、でも実際、どうしようもない。デリケートな顔を一層デリケートにして、あくまでも人造人間だったエドワードは、この街を去る決心をする。一生、本物の人間にはなれない辛さ。春が来て、夏が来て、秋になって、冬が来て、それが永遠に続く間、ロボットのエドワードは永遠に生き続けなければならないのだ。

 丘の上の孤独な屋敷。ここにエドワードは独り、戻ってきた。もう下界には行かない。行けない。大好きなキムさんは優しかった、美しかった、僕を抱いてくれた…。一生そのことだけを命の糧として、エドワードは暗く寂しい生活を、この別世界でし続けねばならない。

 ラストシーン。冬、エドワードは氷の彫刻をハサミで作っている。全く孤独でコツコツ彫るエドワード。無表情にひらすら彫るその姿に、観る者はウルウルになる…。ジョニー・デップが哀愁を込めて、上手い。エドワードの彫った氷の粉が雪となって舞う。その雪をキムが手をかざして天を仰ぐ。

 そのキムが、今、おばあさんになって、孫娘と話をしていたのだ。キムはあれから一生、他の人と結婚しても、エドワードのことを想い続けたに違いない。キムは最後に愛しそうに言う。「こうして町に雪が降るようになったのはね…」。

(■解説とネタばれ:2003/03/10アップ ◆俳優についてリンク更新:2003/10/02)
以上。
<もっと詳しく>からスペースを含まず5262文字/文責:幸田幸
coda_sati@hotmail.com
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